破産手続きではすべての財産が没収されるというわけでなく、破産法にしたがって、「換価すべき財産」と「残すことができる財産」とに区別されます。
破産法第34条
破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする。
2 破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権は、破産財団に属する。
3 第一項の規定にかかわらず、次に掲げる財産は、破産財団に属しない。以下略
平成28年4月28日、上記2に当てはまるか疑義のある債権につき最高裁判所で判断が下されました。
【概略】
破産者Aさん、その息子Bさん。(簡略化しています)
1.平成23年、BさんはAさんを受取人とする生命保険を契約
2.平成24年3月、Aさんが破産手続開始決定
3.平成24年4月、Bさんが死亡
4.平成24年5月、Aさんが保険金請求手続き・保険金受領
【論点】
破産手続開始決定後の当該受領保険金は、第34条2項の「破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」といえるか? すなわち債務者の手元に残せるのか。
【結論】
破産法第34条2項に該当するものとして、破産財団に属すると解するのが相当である。つまり債権者に配当するための換価すべき財産として債務者の手元には残せない。
以下判例から大事な箇所を引用しています。
3 原審は,本件保険金等請求権は,破産法34条2項にいう「破産者が破産手 続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」に該当するものと して,本件各破産財団に属することになるから,上告人Y1が本件金員を費消したことは,上告人Y1において本件金員を法律上の原因なくして利得するものであ り,また,上告人Y1が本件金員のうち800万円を費消したことについて,上告 人Y2に弁護士としての注意義務違反が認められるとして,被上告人らの本訴請求 のうち上告人Y1に対する請求を認容するとともに上告人Y2に対する請求を一部 認容し,上告人Y1の反訴請求を棄却すべきものとした。
4 所論は,第三者のためにする生命保険契約(生命共済契約を含む。以下同 じ。)において,死亡保険金受取人の請求権は,被保険者が死亡したときに初めて 生ずるものであり,被保険者が死亡する前に上記死亡保険金受取人が有しているの は,権利ではなく期待的利益にすぎないにもかかわらず,本件保険金等請求権が本 件各破産財団に属するとした原審の認定判断に法令の解釈適用の誤りがあるという ものである。
5 第三者のためにする生命保険契約の死亡保険金受取人は,当該契約の成立に より,当該契約で定める期間内に被保険者が死亡することを停止条件とする死亡保 険金請求権を取得するものと解されるところ(最高裁昭和36年(オ)第1028 号同40年2月2日第三小法廷判決・民集19巻1号1頁参照),この請求権は,被保険者の死亡前であっても,上記死亡保険金受取人において処分したり,その一般債権者において差押えをしたりすることが可能であると解され,一定の財産的価値を有することは否定できないものである。したがって,破産手続開始前に成立した第三者のためにする生命保険契約に基づき破産者である死亡保険金受取人が有する死亡保険金請求権は,破産法34条2項にいう「破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」に該当するものとして,上記死亡保険金受取人の破産財団に属すると解するのが相当である。
破産手続き開始決定後の原因に基づき取得される財産については自由財産であるところ、今回の請求権は破産開始前の将来の請求権として破産法第34条2項に該当するものとした判断です。
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