1 寄付の意思表示の取消し
個人は法人等が寄附(法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律(以下「法」という。)第2条に規定する寄附をいう。以下同じ。)の勧誘をするに際し、当該個人に対して法第4条各号に掲げる行為をしたことにより困惑し、それによって寄附に係る契約の申込み若しくはその承諾の意思表示又は単独行為をする旨の意思表示(以下「寄附の意思表示」と総称する。)をしたときは、当該寄附の意思表示(当該寄附が消費者契約(消費者契約法(平成12年法律第61号)第2条第3項に規定する消費者契約をいう。以下
同じ。)に該当する場合における当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を除く。)を取り消すことができるとされました(法第8条第1項)。
2 扶養義務等に係る定期金債権を保全するための債権者代位権の行使に関する特例
法人等に寄附(金銭の給付を内容とするものに限る。以下同じ。)をした個人の扶養義務等に係る定期金債権(法第10条第4項に規定する定期金債権をいう。以下同じ。)の債権者は、民法(明治29年法律第89号)第423条第2項本文の規定にかかわらず、当該定期金債権のうち確定期限の到来していない部分を保全するため必要があるときは、当該個人である債務者に属する当該寄附に関する次の(1)から(3)までに掲げる権利を行使することができるとされました(法第10条第1項)。
(1) 法第8条第1項の規定による取消権
(2) 債務者がした寄附に係る消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示に係る消費者契約法第4条第3項(第1号から第4号まで、第6号又は第8号に係る部分に限る。)(同法第5条第1項において準用する場合を含む。)の規定による取消権
(3) (1)又は(2)の取消権を行使したことにより生ずる寄附による給付の返還請求権
3 供託手続等
(1) 供託請求
前記2(3)の場合において、扶養義務等に係る定期金債権のうち確定期限が到来していない部分については、民法第423条の3前段の規定は適用しないとされました。この場合において、債権者は、当該法人等に当該確定期限が到来していない部分に相当する金額を債務者のために供託させることができるとされました(法第10条第2項)。
なお、法第10条第2項が債権者に供託請求を認めた趣旨に鑑み、供託者である法人等は、当該債権者による同意がある場合などを除き、供託金の取戻請求権を行使することができないこととなります。
(2) 供託の通知義務等
ア供託の通知義務
(1)の供託請求により供託をした法人等は、遅滞なく、前記2(3)の返還請求権を行使した債権者及びその債務者に供託の通知をしなければならないとされました(法第10条第3項)。
イ供託通知書の発送請求
アの通知について、供託者である法人等は、供託官に対し、被供託者である債務者のほか、債権者についても、供託通知書の発送を請求することができます(供託規則(昭和34年法務省令第2号)第16条第1項、改正通達による改正後の供託事務取扱手続準則(昭和47年3月4日付け法務省民事甲第1050号当職・法務大臣官房会計課長通達)第33条第3項)。この場合の供託書は、債権者に供託通知書を発送することを請求すること及びそのために必要な事項が記載されたものであることを要します。
経過措置
1 法第8条第1項の規定は、法の施行の日以後にされる寄附の意思表示(法第4条第3号及び第4号に掲げる行為により困惑したことを理由とするものにあっては、消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律(令和4年法律第59号)の施行の日以後にされる寄附の意思表示)について適用するとされました(法附則第2条)。
2 消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律の施行の日の前日までの間における法第10条第1項の規定の適用については、同項第2号中「から第4号まで、第6号又は第8号」とあるのは、「、第2号、第4号又は第6号」とするとされました(法附則第3条)。
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