民事訴訟法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議
政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
一 本法施行後において、訴訟手続の電子化が速やかに行われ、適切な裁判が実施されるよう環境整備及び事務負担の軽減に努めること。
二 訴訟手続の電子化を円滑に進めることが利用者の利益になるという観点から、施行後五年を経過した場合における検討に当たっては、改正法の施行状況や施行後の情報通信技術の進展等の社会経済情勢を踏まえつつ、電子情報処理組織による申立て等の利用を拡大・促進するための方策について検討すること。
三 訴訟代理人に委任しない者が電子情報処理組織による申立て等を容易に利用できるよう、関係機関及び日本弁護士連合会・日本司法書士会連合会等と連携し、必要に応じて弁護士・司法書士等による支援を受けられる環境整備に努めること。
四 訴訟手続は国民の権利関係の得喪に深くかかわり、その電子化は重大な事柄であるから、制度の円滑な施行を実現し、その利用を促進するため、関係機関及び日本弁護士連合会・日本司法書士会連合会等と連携して、制度の周知を十分に図ること。
五 裁判所の電子情報処理組織を構築するに当たっては、サイバー攻撃などで訴訟記録が流出して訴訟関係者のプライバシー侵害が起こらないよう、適切なセキュリティ水準を確保するとともに、誰でも分かりやすく使いやすいものとするよう努めること。
六 訴訟記録を電子化するに当たり、事件記録の保存期間を広げるとともに、判決書については、国民が調査や分析しやすいものとなるよう努めること。
七 ウェブ会議の方法による証人尋問等については、心証形成が法廷で対面して行われるものとは異なる場合もあることを踏まえ、裁判所における相当性の判断が適切に行われるよう法制度の趣旨について周知すること。
八 口頭弁論等における当事者等のウェブ会議による参加については、当事者や証人へのなりすましを防止すること及び第三者からの不当な影響を排除すること並びにウェブ会議の録音・録画を防止することを確保できるよう努めること。
九 訴えの提起の手数料の在り方について、本法施行後における裁判手続の事務処理の実態等のほか、訴える側の資力により、適正な訴額の請求を断念せざるを得ない状況があるとの指摘も踏まえつつ、負担の公平の見地から、必要な検討を行うこと。
十 訴訟手続の電子化を速やかに実現させるため、裁判所の必要な人的態勢の整備及び予算の確保に努めること。
十一 民事訴訟手続を利用する障害者に対する手続上の配慮の在り方について、本法施行後の制度の運用状況及び障害者の意見も踏まえて、障害者のアクセスの向上に資する法整備の要否も含めて検討し、必要な措置を講じること。
十二 附則第百二十六条の規定による検討については、改正法の施行状況や施行後の情報通信技術の進展等を踏まえて、適時に行うこと。
現状はどんなに電子化しても結局、裁判書類を印刷して裁判に臨んだり、ウェブ会議の運用も限定的だったりするじゃないかという批判の声も聞こえてくるようですが、IT化に向けて第1歩を踏みだすことは大事だと評価します。
その他、ウェブ上で事件記録の閲覧が可能になったり刑事事件における証拠のデジタル化も進めば、社会全体の利益に資することになります。